氷上郡天台宗寺院会報
(どうしん)
・・・創刊号・・・



◆創刊ごあいさつ


   第6部主事 高 見 智 秀

 檀信徒の皆様方には、ご壮健にてお過ごしのことと心よりお慶び申し上げます。
 このたび兵庫教区氷上郡の檀信徒の皆さまを対象に布教活動の一端として「会報」を発行することに致しました。

 天台宗の僧侶と檀信徒がお互いの考え方や体験談をこの会報を通じて交わし合い、宗祖伝教大師様の御教えである「一隅を照らす」「己を忘れて他を利する」の精神を日々の暮らしの中で実践し、明るい家庭・社会の構築に通じればと願っております。皆様の絶大なご理解ご支援をお願い申し上げます。


◆いのちは預かりもの

 仏教といえばお寺。お寺といえばお葬式や法事。と、普段の日常生活とかけ離れたイメージがあります。

 しかし、日常生活の中で、仏壇や神棚をお祀りし、朝夕お参りをしています。この神仏共に信じ救われるという素朴な信仰が、いま忘れ去られようとしています。生活にメリハリをつけるためにも、毎日の誓いや反省が必要です。

 私たちの心のあり様や人間の真の生き方を教えてくれるのが仏の教えです。
 私たちは、あまりにも自分の事だけを考えすぎではないでしょうか。損得だけで行動する気持ちを切り替えてみませんか。

 私たちは、色々な場面で人に迷惑をかけています。会社の中で、自分が課長になれば誰かは出世できません。自分一人が努力して苦労したのだから、成功したのは当たり前と有頂天になります。

 「わたし」という存在は、実はわたしのものではないのです。生者必滅というように、生じたものは必ず滅します。「わたし」という生命は、仏さまからの預かりものなのです。昔から「子どもは授かりもの」というではありませんか。

 「一切衆生、悉有仏性」。生きとし生けるものはみんな仏となることのできる性質(仏性)を持っているのです。天台宗を開かれた伝教大師最澄さまは「己を忘れて他を利するは慈悲の極なり」と書かれています。

 「私にも仏性があるのだ」ということに気がつき、周りのことに気を配れる人となりたいものです。そうすれば、もっと住みやすい日本になるのではないでしょうか。



◆青少年研修

「夏の集い」に27人





 氷上郡の天台宗寺院では、子どもたちの健全育成をめざして、毎年夏に青少年研修会を実施しています。今年も8月19日から1泊2日で、正福寺と神池寺を会場に行いましたので紹介します。

 氷上郡の天台宗寺院が『感謝の心・自然とのふれあいの中で』をテーマに実施する青少年研修会「夏の集い」は、今年で12回目を迎えました。

 今回は郡内各地から小学生24名と中学生3名が参加。春日町下三井庄の正福寺(荒樋昇誠住職)に集った参加者は開講式のあと写経を行い、続いて裏山にある市島町の妙高山神池寺(荒樋榮晋住職)をめざして登山。

途中の祠や野仏等にまつわる伝説や植物に関する学習をしながら、およそ1時間で第二会場となる神池寺会館に到着。早速、ボランティアで協力下さった真言宗清薗寺(市島町中竹田)の近藤丈夫住職による手品を楽しんだ。

 また、飯ごう炊さんでは、食事作りの苦労を学ぶと共に、大切な命を自分の命のためにいただくことに感謝しながら、それぞれが炊きあげた御飯を美味しそうに食べていた。

 夜に予定していたキャンプファイヤーは台風の余波で中止となったものの、ボランティアの八尾裕子さんが歌やゲームを交えて楽しい一時を演出下さり、参加者たちの歓声が山上にこだました。

 明けて20日は、早朝より止観(座禅)に挑戦。また朝食後は、野外活動推進協会の西村さんを講師に、山中を散策しながら動植物や自然の摂理などを学び、1泊2日の研修を修了した。

 なお、初日の神池寺登山にあたり、正福寺の檀家の皆様が、7月28日に奉仕で登山道の整備をして下さいました。謹しんで感謝申し上げます。


◆トピックス 

桂谷寺で10月に落慶式
 
 春日町野上野の桂谷寺(大瀧孝雄住職)では、来る10月20日に部内・法縁寺院住職をはじめ、多くの檀信徒が参列して、本堂・庫裡の落慶法要が執り行われます。

 一昨年、本堂・庫裡の老朽化に伴い住職と建築委員が中心となって建て替えを計画し、檀信徒の暖かい支援のもと、本年7月に無事完成しました。

 今回の工事では、境内地を拡げるために裏山の一部を削り、その土を利用して駐車場や参道の整備も行われ、また、この機会に庭や池も手入れされ、寺観が一新されました。

 式典に華を添えようと、新たに御詠歌の会も発足し、会員の皆さんは毎日熱心に練習に励まれています。

 念願の落慶式を盛大にと、住職・役員を中心に檀信徒あげての準備が進められています。


◆我が家は天台宗 

第1話 宗派の始まり
 
 「天台宗」についてお話しする前に、まず「宗派」について簡単に説明をします。

 お釈迦さまの教えを説いたお経の数は、約三千あるといわれています。数多くのお経をインドから伝えた中国の仏教家たちは、お釈迦さまの正しい教えを求めて、それぞれがある一つのお経を選びだし、そのお経を中心としてお釈迦さまの教えを説こうとしました。これが宗派の始まりです。

 そして、この中国における宗派仏教の伝統が日本に伝わって、日本の仏教もまたいくつかの宗派に分かれ発展してきたわけです。 

 仏教の究極の目的は、「人間の苦しみや悩みを解決して仏陀(真理に目覚めた人)になること」です。にもかかわらずいくつもの宗派に分かれているのは、この「仏陀」に対する解釈、つまり、
 
 @仏陀になれる時期。
 A仏陀に到達するための手段。
 B数多くのお経の中で、どれを中心にして教えを説いていくか。
   の違いからです。

 現在の日本仏教の宗派は十三派です。次号でお話していきます。


◆寺院さんぽ@




竹林山 常勝寺  
               氷上郡山南町谷川2630 宮崎実順住職

  常勝寺は、ふもとより本堂へ真直ぐ続く360有余段の石段と、丹波地方では唯一の鬼追い式「鬼こそ」のお寺です。

 常勝寺の鬼は善玉の赤・青の4鬼で、六方をふむような足取りで本堂を廻る様子は力強くもあり、またどことなくユーモラスな感じがします。
 
 鬼が最後に庭へと投げる松明(たいまつ)を持ち帰ると、1年間「家内安全」「無病息災」と云われ、多くの参詣人が奪い合います。
 
鬼こそは、毎年2月11日の午後1時より行われます。


◆身近な仏教用語  @
 
「しゃり」

 すし屋の職人は、ご飯のことを隠語でこう呼ぶ。しかし、もともとは遺骨のことで、梵語(古代インド語)のシャリーラがなまって「しゃり」に。

 漢字に直すと「舎利」。しかし骨と米粒がどうして結びつくのか?。お釈迦さまは死後、荼毘(火葬)に付されたのだが、そのとき骨は、小さな米粒のように砕けたという伝説がある。要するに形状が似ていたからなのだ。
 
 それにしても、古代のインドでも米粒のことを「しゃり」と呼んでいたというから、この隠語はかなり古い外来語といっていい。    
                   

◆山寺説法@

認め合い     天台宗布教師 荒 樋 昇 誠

 天台宗を開かれました伝教大師最澄さまは「一隅を照らす人こそ国の宝である」という有名なお言葉を残されております。

 それは、私たち人間一人一人がそれぞれの立場で光り輝くということです。家庭でいうと、お祖父さん、お祖母さん、お父さん、お母さん、そして子供たちといった違う立場の人が暮らしています。それぞれの存在の素晴らしさを認め合うことによって、お互いが幸せに暮らしていくことが出来ます。
 
 例えば家で言いますと、柱や天井板、壁など見えている部分があります。しかし見えている所だけでは家は建ちません。見えていない所でたくさんの材料が使われて家が建っているわけです。見えている柱、見えていない柱、それぞれが役目を果たしてこそ家は支えられております。小さな釘一本抜けても家は成り立つことはできません。
 
 それぞれが、それぞれの立場で責任を果たし、認め合っていくことが、幸せな社会を形成していく力になるのです。


◆編集後記

『道心』創刊号いかがでしたでしょうか。

 とかく世間では「仏教は葬式や法事などの仏事を行うだけのもの」という認識しかないのが現状です。仏事は大切なことなのですが、本来仏教は「どのように生きるのか」「心の救いをどのように求めるのか」という、生きている人に語りかけるものであるはずです。この会報を通して、仏教が日常生活において身近に感じられ、心の拠り所としていただけるよう願っています。

 みなさんのご意見やご感想、また質問をお寄せ頂いて、よりよい会報にしていきたいと考えています。今後ともよろしくお願い致します。 
合掌